冬の荒れた天気

H市で作業をしていると電話が掛かってきた。K市の機械トラブル発生のため、修理とそれにより被った客のブツを処理して山の方の客宅へ持っていくことになった。
それにしても霰や雪混じりの雨が降り頻っている。休み明けのモクヨウビは調子が優れないのに天候までこうだとな。
機械の方は部品を交換したので大丈夫だろう。客のブツを処理し、カーナビをセットした。
国立大学のキャンパスの方向に走る。厚着をした学生たちがわらわらと寒そうに歩いている。ざっと見たところ、憂鬱そうな顔をして歩いている者はいなかった。
山の方に近づいてくると雪の量が増えてきた。客宅。
インターフォンを鳴らし、ドアを開けると少年が出てきた。小太り、いや、太った坊主頭の少年。キャッチャー体型だ。
大人の人はいないかと聞くと、いないと言う。住所が○○の○○番地で○○○○さんのお宅で間違いないですね。ではこれをどうぞ。どうもすみません。
少年の方はやたら礼儀正しく、遠くから来ていただいてありがとうございますと言って30キロほどのブツを軽々持ち上げた。こちらこそありがとうございます。去る。
相手が誰だろうと相手を傷つけまいという配慮、敬語、挨拶は必要だ。自分を傷つけないために。
車のフロントガラスには霰が何度も打ちつけられ、ガラスは度々曇りだす。滞りなくパチパチという音が響く。
事務所に戻る。君は起伏がない人間だね、それは部署のバランス的にいいことだ、ととある人に言われる。別に私は模範的な助力者でもなんでもない。年の瀬の混乱期だからかそんなことを言われたのだろうか。
ともかく自分は静かに暮らしたいのだろう。
毎日寒い。太陽が逃避する時刻が早すぎる季節は我々も労働からさっさと逃避すべきである。