十月十九日。水曜日。

 朝、凶暴に気が立っていた。今朝に限ったことでなく、最近は自身のバロメーターと目している交差点の信号で、通る直前に赤になると酷くムシャクシャすることで、現在の自分は気が立つ周期に入ったな、と感づくことができた。原因を考えれば、食生活が偏っている(肉が中心で、カルシウムが不足している)、手淫が多い、運動不足など様々な因が考えられるのだが、四半世紀も自分と云う人間をやっていると年間に何度かこう云った時期が訪れることは把握しており、驚くべきことではない。しかしながら、他の人間はどうなのだろう。やはり自分のように凶暴な時期は存在するのであろうか。犯罪者や犯罪者予備軍と云われる人間にはあって当然の時期のように思えるが、善良な市民にはそんな周期はあったとしても理性を保った上で乗り切っているのだろうか。
 この周期的な凶暴な気は、卑劣極まりなく、血塗れになってでも憎むべき何かと争った上で、姑息な方法で憎むべき何かを根絶させなければ消えないような類であり、ひょっとしたらちょっとした衝動で気に押されて一気に自分の人生が堕落するほどの殺人的なことをしでかしてしまうのではないかと危惧する。何とか今のところは自分の物を破壊する程度の破壊活動で抑えているが、どうかすると他者に向けて発散させられて、そうなると生きてゆけまい。この日記も、犯罪者の手記として警察に押収されてしまう可能性もなくはないのである。
 今日は休日であった。背中にまで粉塵が忍び込んでくるような仕事をしなくていい日である。
 免許証の更新に免許センターへ出向いた。三年ぶり二度目の更新。昨年七月に赤信号無視をしたと云う事で(これも先述の凶暴な周期にしでかしたことである)、またしてもブルー免許になるわけであるが、しぶしぶと会社近くの免許センターに車を走らせる。センターへ入った瞬間に流れ作業の波に飲み込まれる。「はい、まずは暗証番号を登録に行ってください」、「次は印紙」「次は青いところへ」「更新料3,600円です。安全協会の会員になっていただけますか?」いえ、結構です。「次は青いところへ」「視力検査へ」「写真撮ります」。
 あっという間に一連の流れを終えて後は講習を受けるのみとなった。平日にもかかわらず多くの人が更新しに来ている。当たり前だけどいろんな人が来るとこだ。工場なら工員だけ、野球場なら野球好きだけ、レストランなら外食好きだけが来るのだが、此処は免許所持と云う条件以外は都会的な人間、田舎的な人間関係なく、無条件に市内外から人が毎日訪れる。そう考えると何だか凄いところに思えてきた。
 講習は60分コース。教室は一杯である。テキストを貰う。悲惨な交通事故加害者、被害者の手記を読んで「この世から車も免許も無くすべきだなあ」と世間的にいえば退廃的なことを何となく思っていると、講習が始まる。何十回、何百回も同じ講習をしていると遊び心が芽ばえるのだろうか。のっけからやたらと比喩の多い講師であった。「60分は最寄の空港から羽田に向かう時間と同じですよ。それではテイクオフです」。これが枕詞のようで、「確認が大切です。前よし、後ろよし、顔悪し」などウィットにも富んでいるようであった。
 あっという間に講習は終わり、免許証を頂く。前より老けた顔だ。「平成28年まで有効」。生きてるかな。
 メール。高校時代の友人である熱狂的中日ファンから約二年半ぶりのメール。中日が優勝した云々の短文のメールをよこしてきた。中日優勝よりオリックスの悲劇的な結末の方がこちらとしては気がかりなのだが。最後にやりとりしたのは私が地元の画像を彼にメールした時だが、返事が無かった。やはり地元を捨てた奴(此処は陰湿な地方だ、と吐き捨てて東京に向かった)に地元の画像など送るのではなかった、と悔恨の念に囚われた具合である。そうしてこちらが最後に送って向こうから音沙汰なしであるとこちらも送る気はしなくなる。
 そうして二年半が経ち、メールが送られてきた。こちらの近況を聞くわけでも自分の近況を云うわけでもなく、前からこんな調子だ。彼は二年前、中国人の風俗店店員と付き合っていたようだがどうなったのだろう。自分ほどではないが、高校時代控え目派な男だと思っていたのだが、後から聞くと当時から彼女がいたとか、何だか昔から女子に部活に充実している野郎である。まあ中国人店員に関してはこちらもさほど興味も無いので「続報キボンヌ」(ばりばり2ちゃん用語でメールしてた時期もある)とか突っ込まないでおこう。
 昨晩観た映画「コクリコ坂から」で自転車二人乗りシーンがよかったので、数年ぶりに自転車を出して乗ってみた(高松市でレンタサイクルで借りて運転して以来か)。天気もいいからか自転車は、いい。爽快だ。程よい運動にもなる。高校の頃はいつも乗っていた。

 落ち葉もちらほらと落ちており、銀杏もある。風流だ。図書館へ行って文学小説を読み散らす。少し気が治まって来た。