無聊

 朝は先ず朝刊を見る。関東大会を目指す某大学駅伝部監督が解任された報あり。同学年である位しか共通点がないが、年若き教え子の女体を好きなだけ弄くったのならば、今後週刊誌沙汰で闇雲に叩かれようとも、もはや悔の念も無いだろう。女体の記憶だけで是から手淫して、しまくって生きていけば上等であろう。

 

 などと金輪(かなわ)は思いに耽るのであるが、彼は陰湿な裏日本特有の他人の不幸を蜜と捉える悪しき気質を図らずも受け継いでいる傾向にあり、それは彼が、つまらぬ犯罪容疑の載っている三面記事を読んでいるときも知り合いが載っていないか都度名前を確認している様相でも確かなものと思われる。
 無論、金輪は自身のような陰湿な他人に物笑いの種にされまいと(三面記事に載るわけにはいくまいと)意地でも法を犯さないようにしている。彼は他人に馬鹿にされることを恐れ、その恐れが犯罪抑止となっていることで辛うじて体面を保っている。
 

 さて、三連休明けの四日間の労働は無聊の一語である。先週に続き工場の研修であるが、やることが先週と同じで刺激が殆どなく、それでいて朝から夕方五時まで拘束されて狂気の一歩手前の感情が競り上がる。
 一日七時間、同じ製品をひたすらに整えて工員にパスをする。本当に何もやることが無いときは虚ろに粉塵塗れの工場の天井を見やるしかない。
 金が貰えるなら何でもいい訳ではない。あまりにも虚ろな感情が粉塵と相見える
 割に合わない。こんな虚しい仕事は例えば退勤時に年若き健康的な女がパンティを生脱ぎして毎日贈与してくれなくては割に合わない。

 爪が真っ黒で手が痛い、腰が痛い、背中が痛い。筋肉痛も酷い。心も酷い状態。拷問のような研修だ。こんなに厭ったらしい気分は久々で、草臥れた週の真ん中には半ば自棄気味に昼食にすき家のチーズ牛丼特盛を貪った。
 工場に逃げ場はない。今週までの研修とはいえ、この厭ったらしい粉塵の土方業をやる以外ない空間にいる自分に妙に腹立たしくなり、そんなわけがないとInd○edなる求人サイトを閲覧して適当に一件応募為てみた、来週早速面接である。