今日の日記

 水曜休みで明けの木曜というのはいつも気だるいものだ。
 午前、部長の戸根川にパソコンでの作業を唐突に頼まれる。やばいな、苦手分野だけに厳しい。とはいえ、戸根川からの初めての指示。ひりつかなきゃダメ。顔が紅潮し、体温はせり上がり、胃まで痛んでくるが、仕事ってのはこういうものだと思う。しかしまあ時間が掛かってしまった。システムエンジニアの人とか一日中パソコンとにらめっこしてんだろう。俺にはできませんな。外で粉塵塗れになっている方が正直気楽だ。
 そうして午後から外を回って作業。
 夕方、詳細は省くが客の独居老人宅に金を持っていくという所為を施すことになる。市名、大字名、市営住宅であるということ、名前が書かれたメモを頼りに走る。それらしき○○という町にある市営住宅に到着する。団地独特の雰囲気に圧倒されながらもポストを見て名前を確かめる。しかし一致するものはない。客に電話をする。「○○(←大字名)?そこ違うよ…○△だよ」。田中邦衛みたいな声。メモの大字が間違えてあるようだ。ひでえなあ。メモを書いたのは課長さんだが、ちょいちょい間違えてるんだよな。○△という町は○○という町から十キロも離れている。既に夕方五時。
 駅前で渋滞に巻き込まれる。救急車が複数走っている。近くの建物から黒い煙がモワモワと出ている。混雑する中、やっとこさ○△という町に着く。閉塞感漂う市営住宅二棟のポストを確認するも、どうも客の名は見当たらない。なんだかゾッとしてくるね。
 客に電話をする。「市営住宅が分かりませんので○△のコンビニに来て頂けませんか。そこでお金を渡します」と文字に起こすと何だか訝しげな台詞を述べる。「わかった、いくから〜」と田中邦衛みたいな声。
 挙動不審にコンビニ前で待つ。軽快に自転車に乗った老人が車の横に止まる。予想よりシャキッとした老人である。齢は六十前後だろう。フットワークが軽そうというか。市営住宅に一人で暮らしている老人とは思えぬほど活き活きとした雰囲気。ジジイ、待たせたな!と金を渡す。少し会話をし、ご苦労さんと声を掛けられ、そこから四十キロ先の会社に戻る。今日は疲れた。